第20章 柱稽古とお館様
先ほどの稽古後の様子を見ていたからだろう。
柱稽古により基礎体力は上がっているものの、特異能力がなければ普通の女子と変わりない年頃の女子だ。
運動神経は元より優れた方であっても体力や足の速さなどは特筆したものはないので、あまり無理をしすぎてしまうと今日のように限界を迎えてしまう。
心配しながらも更紗の返答など聞かずとも分かっていたのだが、やはり予想通りの言葉が笑顔で返ってきた。
「ありがとうございます。無理はしないと約束しますのでご安心ください!今日は醜態を晒してしまいましたが……明日は今日より上手く動けるはずです!2週間ほどすればお家に帰りますが、その時に筋肉がムキムキになっていても嫌いにならないでくださいね!」
真顔で冗談のような言葉を聞いた杏寿郎は笑顔のまま固まり、ムキムキになった更紗を思い浮かべて吹き出した。
「嫌いになどならない!だが、俺より大きくなってしまってはこうして胸の中におさめることが出来なくなるので、それは少し寂しいと思うやもしれん」
快活な笑顔とは裏腹に更紗の体を抱き寄せる力は凄く優しく、壊れ物に触れる時のそれに似ている。
そんな優しい感覚と温かさにホッと息をついた後、杏寿郎の顔を下から覗き込むと本当に寂しい表情をしていたので、盛り上がるような筋肉は諦めてこのままでいようと心の中でこっそり誓った。