第20章 柱稽古とお館様
「俺はあの時、鬼から更紗が毒針で全身を貫かれ瀕死だと聞かされた。鬼は人を誑かし己が生きるためなら平気で嘘をつく。そう分かっていたが、俺には君の安否を確認する術を持たないので、激しく動揺し……同時に腹の底から鬼に対して抑えようのない怒りが込み上げた」
当時を思い出しているのか、杏寿郎の顔が険しさを増していく。
結果的に更紗は無事だったが、真偽が分からない状況で大切な人の命に関して触れられれば、杏寿郎のような感情を抱くのは仕方ないことだろう。
特にその触れてきた相手が鬼ならば尚更だ。
「今思い出しただけでこの有様だ。だが今は感謝すらしている、あの忌まわしい鬼のお陰で……こうして鬼を追い詰める大きな足掛かりを手に出来たからな!」
怒りからか歓喜からか……柄を握る杏寿郎の手が込められた力に呼応して小刻みに震えた。
そしてそれに伴って日輪刀の刃が色を上塗りするように美しく真っ赤に染まっていく。
「鬼によるとこれは赫刀と言うらしい。あの時は深く考えていなかったが……なるほど、これは先の闘いで役に立ちそうだ。更紗、日輪刀を構えろ。君は戦力として、守りとして重要な存在となる。身を守るため、命を守るためにこれを自分のものとするんだ」