第78章 燃ゆる想いを$(冨岡裏)
明くる日、宇髄は離れの様子を見るなり、再び襖を閉めた。
というのも、二人とも穏やかな顔で抱き合って眠っていたからだ。
「ま、もう少し寝かしといてやるか」
「天元様」
「雛鶴」
「お二人の朝餉はどうしますか?」
「あー、とりあえず、もう少ししたら持ってきてくれ」
「?」
宇髄の歯切れの悪い返事を聞き、雛鶴は目を閉じ、部屋の中の気配を探る。
動いている気配は無いので、事の最中では無いようだ。
「大丈夫だ。おかしな事してる訳じゃねえよ」
「分かりました」
そう言って、雛鶴は母屋へと戻っていく。
「あんな幸せそうな顔、出来るようになったんだな…」
宇髄の言葉は風に溶ける。
ゆっくりと踵を返し、宇髄も母屋へ向かう。
夏に近くなり、鳥の囁きと虫たちの鳴き声が近付いてくる気配がする。
さりとて、今はまだぐっすりと眠るこの二人が、変わらず幸せであることを宇髄もまた願うのである。
ー了ー