第70章 咲くは朱なれど散るは白
「其方は藤の花が、よく似合うな」
当時はそう言って、時期になると、ひと房だけ枝から貰い受けては彼女に渡していた。
無惨は舞山の記憶を白藤の存在で紐解いていく。
蜘蛛の糸を手繰るように。
蘆屋道満、舞山自身が手にかけた薬師。
青い彼岸花。
凌辱された宴。
腐敗しきった貴族達。
全て、消したかった。
舞山を知る者、全て。
でも、彼女だけは例外だった。
舞山が唯一、傍に侍らせた大事な女性。
叶うならば、夫婦(めおと)になりたかった。
一夜限りの閨を共にした、あの時。
そのまま、私は自ら命を断てば良かった。
そうすれば、この様な。
彼女を巻き込むことは無かった、はずだ……