第70章 咲くは朱なれど散るは白
俺から、彼女を奪わないで欲しい。
冨岡は初めて、そう願った。
他の柱にも、炭治郎にも、黒死牟にすら、こんなに強い感情は芽生えなかったはずなのに……
何故だか、鬼舞辻には。
奪われたくないと思った。
「白藤……」
頼むから、居なくならないでくれ。
姉さんにすら言えなかった我儘を。
「こっちだ……」
上手く、言葉に出来ない。
伝えたい事があるのに……
冨岡に差し出された手を、白藤は直ぐに掴むことが出来なかった。
確かに、冨岡は自分にとって特別で。
とても大切な人である。
でも、それは舞山にも当てはまることである。
彼女にとって二人は、優先されるべき価値のある人物なのだから。