第84章 新たな拠点、新撰組
それから暫くして、レンは部屋に来た隊士に連れられて行く。すると、先程の部屋へと通された。
そこには机に向かう土方がいて、こちらをちらっと見てから隊士に手を振った。
「ご苦労だった。下がっていいぞ。」
「失礼します。」
どうやら、ここは土方の自室らしい。
レンは閉められた障子を見てから、部屋の隅へと移動して腰を下ろした。
その間も、土方は何事か呟きながらひたすらに筆を走らせている。
「楽にしていいぞ。もうすぐ山崎も来るだろうからな。」
「はい。」
レンは、答えてから辺りを見回した。
部屋の隅には、あちらこちらに紙の束が雑然と置いてあり、書き込まれている紙と新しい紙がそれぞれ分けられて置かれている。
その他にも、筆記用具らしき、筆や墨、文鎮などが纏めて籠に入っているのも目に入った。
「…本当は整理をしたいんだけどな。中々に忙しくて手が出せてねえんだ。」
変わらず机に向かったままの声に耳を傾けながら、レンはふむ、と納得する。
「国広があなたの下につきたがっていますが、どうでしょう?」
レンが言うと、土方の手が止まる。
何かを迷っている様にも見えたが、次いで、はあぁ、と大きなため息が聞こえる。
振り向いた土方の顔は見るからに渋面だ。
「あのな…、原田達にも言ったが、秘匿しておかなきゃならねえもんがいっぱいあるんだ。人を入れるって事はそれを曝け出す事になるだろうが。」
それを聞いたレンは、はて、と首を傾げる。
「…見るからに手一杯ですよね?」
「しょうがねえんだよ。」
「効率悪いですよ。仕事は分担しなければ山になる一方です。」
「山を抱えるのは俺一人で十分だって言ってんだよ。」
「ならば、信用できる誰かを側に置くべきです。山積みにしておくのは返って不用心でしょう?」
「ぐっ…。」
尤もな言葉に土方は言葉を詰まらせ、それを見たレンは少し困った様に眉を動かした。