第84章 新たな拠点、新撰組
「お前も薄々は勘づいていると思うが…」
土方は徐にそう切り出して、現状を話し出した。
現状は、レンの読み通りだった。
敵味方に分けるのならば、土方達は味方、伊藤は敵であり、溝は相当深いと見える。
監視もさることながら、間者が紛れていることも土方達は承知しており、それでも排斥出来ずにいた。
しかし、それよりも深刻なのが…。
「…つまり、現在あなた方は新撰組の在籍が危うい状況、という事ですか?」
「あぁ。今ここを牛耳ってるのは近藤さんじゃねえ。あの伊藤甲子太郎って奴だ。新見の紹介で入ってきた奴でな。腕も立つが弁も立つ。ここいた殆どがあいつに持ってかれちまってるって状況さ。」
「伊藤さんは我々を敵視している節がありましてね。時には周りを使い、時には我々に不利な状況をつくり、追い出しにかかっているのです。」
「汚ねえ奴だよ、あいつは。自分の手を決して汚さない。あの弁舌で俺達への反感を煽ってるんだよ。」
「反感を煽るだけに留まるのならいいのですが。あれやこれやと手を回して、我々の行動を牽制するので…。最近はあからさまになってきていますから、頭の痛い事です。」
レンの言葉に、土方と山南が代わる代わる顔を顰めながら説明していく。
レンは今聞いた事を整理しながら、習った歴史と照らし合わせる。
どうにも歴史と現状に食い違いが出ている様に思えてならない。
「…伊藤さんは新見って人の紹介で入った。ならば新見って人も頭に立つ人ですか?」
新見という人物が果たして新撰組の主要人物として台頭していただろうか。レンの記憶には残念ながら名前が残っていなかった。
そして、伊藤甲子太郎。この人物も、この時期に台頭していたのか。もっと後の時間軸ではないだろうか。