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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


「ぶ男って!」
 迫力のない烈火と恥では顔面を赤く染めた。ムキになる彼が可怪しくて、リヴァイは笑いを堪えるのが困難となっていることに、実は気づいていない。
「お前、全身で怒ってるが、ちっとも凄みがねぇ」

 言うと、なぜかの表情から怒りの炎が鎮火した。ランプの仄かな明かりの影響か、いつもより艶めく瞳を揺らす。
「そんな顔して笑うんですね、リヴァイ兵士長って」ぽっと頬も色づかせる。「意外でした」

 リヴァイは思わず瞳を瞬かせた。そんな顔とはどんな顔かと自問する。どうやら自分は笑っていたようだが、信じられなくて緩慢な動きで口許を手で覆った。
「……お前があまりにもアホ面だからだろう」

 自分の指では目尻を吊り上げる。「いつもこんな顔してるよりも全然いいですよ。てっきり笑うことを知らないのかと思ってましたし」
 上官に対して、とても無礼なことを言っていると分かっているのだろうか。が、目尻を吊り上げている彼の顔がまたひどいありさまなので、リヴァイの面がまたぞろ崩れそうになった。

 表情を手で隠すようにして、
「その顔もあとで鏡で確認しろ。今夜のことを後悔して部屋から出られなくなるだろうがな」
「そんなこと言われたら鏡なんて見ませんよ。知らぬが仏ってやつです」
 はにこっと笑って首を傾けた。笑顔はごく自然なものだった。
 リヴァイはまたも瞳を瞬かせた。あどけない彼を見るのも初めてだった。
 笑った顔を見たことがないとは言ったが、彼だってそうじゃないか。いつだって不服そうに唇を尖らせてばかりだったろう。

「なんだ、そりゃ」
 思いがけないことで止まっていた足を再び踏み出す。
 いつの間にか二人して並んでおり、リヴァイは緩い歩調のにおのずと合わせていた。どうしてか彼は機嫌がよく、いそいそと手提げ鞄を漁り始める。

「階段でなんだってんだ、部屋に戻ってからにしろ。脇目してると踏み外して転がり落ちるぞ」
「待っていてくださったお礼に、美味しいものを差し上げようと思って」
「美味しいもの? 何が飛び出てくるんだか知らないが現金な奴だ。監視どうのこうのと、ぶうたれてたくせして」
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