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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


「いまさら遅い」
 ぴしゃりと言うと、はぐっと黙り込んだ。

 いい加減な奴だとリヴァイは思った。本部へ帰ってくるまでが訓練だとちゃんと釘を刺していたのに平気で約束を破る。遅くなったのはおおかた、
「どうせ帰りに市街をぶらぶらしてたんだろ」
 自室へ戻ろうと廊下を歩き出したリヴァイの後ろから声がついてきた。

「違います」不満げな口調だ。「講義のあと対人格闘術の訓練があるっていうんで、ちょっと見学してたんです。長くいるつもりはなかったんですけど、そのまま終わるまでつき合ってきちゃったから、こんな時間になっちゃっただけで」

 先を歩くリヴァイの眼は、ゆっくりと見開いていく。意外だったといえばそうでもなく、望んでいたことに近かかったからだ。
 静かに問い掛けた。

「なぜ訓練風景を見学していこうと思った」
「散る汗や必死な面差しに、目を奪われてしまって」
「それではどう感じた」
「まだ少年の域を出ない子が、ボクなんかにはない強い志を持ってるんだなって思ったら、感慨深くなりました。それもあって、もうちょっと彼らを見ていたかったんです」

 南方駐屯地へ行かせたのには理由があった。若い訓練兵が鍛錬している様子を見て、僅かでもに変化があればいいと、そういう思惑があったのだ。
 がどういう意志で調査兵団を志望したのかは分からない。だが彼は自分から兵士になろうと決めたのだ。だというのにちっとも自覚がなく、覚悟も持ち合わせていないのである。だから訓練兵を通して、胸に何か思うことがあればいいと望んでいたのであった。
 少し反抗的な物言いは上官に対するものではなかったけれど。

「つまんねぇ嘘をつかないで、始めから正直にそう言え」
「これも寄り道だと思ったから、怒られると思ってつい」
「ガキどもと一緒んなって、くっちゃべってたってんなら話は別だが」

 明かりが届かず、上段が薄暗い二階への階段を登る。背中にちりちりと感じる視線から、がまだ不満そうなのが窺えた。
「でもボクって信用ないんですね。帰りを兵舎で待ち伏せされてるなんて思いませんでした」
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