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水平線に消えゆく[進撃の巨人/リヴァイ]

第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)


「それはいまのでよく分かったよ。明後日の講義のときにまた来るから、よろしくお願いします」
 背中がじんじんと痛い。今夜湿布を貼らなくては絶対に腫れる。目尻に涙を滲ませて、夕暮れの空に笑うであった。

14

 兵舎の出入り口からの眺めは、遠くのほうにある点々とした明かりのみだった。どっぷりとした暗闇に支配された敷地内には人の姿などない。本部の食堂から外を通り、そよ風と一緒に香っていた夕食の匂いも、いまはしない。

「遅い。講義はとっくに終わってていいころだろ」
 壁の角に凭れているリヴァイは懐中時計を開いた。足許に置いたランプを頼りに眼を凝らす。二十時を回ったところだった。
 夕食の時間になってもが帰ってきていないようなので、食事に向かったその足で兵舎に引き返してきたのだ。寄り道をするにしても遅い気がする。

 仄暗い廊下を見通す。
「すれ違ったか?」
 兵舎に戻ってくるあいだに、行き違いでは食堂へ行ったのだろうか。だとしても、ずっとここで待っているのだし、もう腹を鳴らす匂いもしてこない。ならばここで鉢合わせするはずだ。
 と決めつけて時間を無駄にするのも要領がいいとはいえないだろう。一旦部屋を確認してこようと、リヴァイはランプの取っ手に指を引っ掛けた。

 ひっ、と驚きを呑み込んだ声が上がる。
「びっくりした! おばけかと思っちゃいました」
 肩を縮め、両手で口許を押さえているだった。
「誰かと思っちゃいましたよ。こんな所に人が立ってるなんて思わないから」心臓に悪いと胸を撫でる。
「こんな時間まで、どこをほっつき歩いてた。晩飯前には帰ってこれるはずだったろう」

 訓練兵団の講義が何時に終わるかリヴァイは予定を知っていたのである。まっすぐ帰ってくれば夕飯にはぎりぎり間に合う計算だった。
 ランプの範囲にがやってきた。下から照らされる明かりの中、彼の瞳が左右に揺れ動く。

「講義が終わったときには、あっちはもう夕飯の時間でした」
 どうしてこうすぐバレる嘘をつくのか。
「つくならもう少しマシな嘘をつけ。大荷物を背負った婆さんを家まで送ってきたとか、迷子のガキの親を探していたとか、良心に訴える法があるだろう」
「おじいさんに道を尋ねられて」
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