第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
組み合っているアニがぶっと笑った。無表情がちょっと怖い彼女が笑うと、顔周りにぱぁっと花が咲いた。
「あんたが兵士に向いてないこと、見抜いてるくせに信じたくないみたい」
「それでか。なるほどね」
調査兵団に所属していることをキースは信じられなかったのだろう。だから通過儀礼をしてきたのである。
「アニって格闘術得意なの?」
「まあね。小さいころからお父さんに教わってたから」
「その技術さ、ボクにも指導してくれないかな」
「あんたに?」
フリというには結構な強さで腕を取っているアニが瞠目した。
「習ってどうしようっていうの」
「まだ分からないんだけど、もしかするとボクも訓練で格闘術をやるかもしれないんだ」
むろん指導するのはリヴァイだろう。彼と組み手するとなると大怪我をしそうで怖い。予防策として対処できるよう予習してしまおうというわけだ。
「予備知識もなくいきなり教わるには、ちょっと怖い教官なんだよね」
「こんなの習ったって意味ないよ。ここにいるみんなだって真面目にやってる奴はいない。成績に加算される点数が低いってことが必要性を物語ってる」
「ボクの理由もまっとうじゃないけど、身につけて損するってことはないよね。誰かに襲われた場合、対処できるじゃない」
アニは眼を合わせない。はにっと笑ってそそり立てる。
「ねぇ、アニ。お父さんに教わって磨いたその技術、思いっきり生かせる相手が欲しくない? みんな真面目にやらないんじゃ、つまんないでしょ?」
「お父さんに教わった……技術」
アニは口の中で呟いた。それから、のジャケットの胸ぐらを掴む。ぐっと距離が狭まり、アクアマリンの瞳が見据えてきた。
「ど、どうかな?」
襟が詰まって苦しく笑うを見て、ふとアニが眼を凝らした。寄せている眉に疑いの気配があった。
「……あんたってさ、まさかと思うけど」
「な、何かな? どうしたの? ボクの顔、可怪しい?」
アニは黙った。と、唐突にはまた空を宙返りする。アニは背負い投げしながらクールな面差しを崩し、
「まあいいや! やる気があるなら次にでも教えてあげるよ、格闘術! その代わり、手加減しないから!」
の背中を、どさっと地面に叩きつけたのだ。