第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
「ジャンは自信あるんだ? 憲兵団に入れるって」
ふふん、と得意にジャンは顎を反らす。
「ずっと上位をキープ中だ。憲兵団入りはもらったもんだな」
「いいな、お前は。頭もいいし立体機動も巧いし。俺は頭が悪りぃから、座学が足を引っ張ってて微妙なラインにいるんだよな」
コニーは耳をほじる。
「憲兵団がもし無理でも、駐屯兵団にさえ入れればいっかって、最近思うようになっちまった」
憲兵団を選ぶしにろ駐屯兵団を選ぶにしろ、エレンのような強い志を彼らは持ち合わせていないようだ。ならばなぜ訓練兵団にやってきたのだろう。答えを背後の少女がクールに言う。
「世間体さえ保てればいいわけだ。生産者なんかに回ってダサく働くより、兵士になったほうが体裁がいいし。そんな単純な考えだよね」
「他人事のように言ってるが、アニ。お前だって憲兵団志望だろ。俺たちと同じ穴の狢だ」
背凭れに肘を掛けて、ジャンは斜め後ろを振り向いた。口端が意地悪に吊り上がっている。
「そうだよ。私も内地で暮らす特権がほしい。ただ、あんたと一緒にされたくないね」
アニとジャンは睨み合う。「まあまあ」とは両手で二人を宥めた。
ずっと下を向いていたアルミンが、そのままで暗く言った。
「憲兵団だけは嫌だな、僕は」
「アルミン」と、気持ちを察するようにエレンが肩に手を掛けるが、
「開拓地で僕らやお年寄りが必死に畑を耕してるときに、彼らは何もしないでただ偉そうに胸を反らせてた。僕たちを奴隷かなんかみたいにクズみたいな眼で見降ろしてきた。そんな兵士に僕はなりたいと思わない」
「なりたい、なりたくない以前に、お前の成績じゃ望んだところで憲兵団へは入れっこないんだから、無駄な心配すんなよ」
ジャンがへらっと笑って言うと、エレンは嫌味たらしく怒った。
「お前は望んでクズになるんだったな! いや、違うか。もとからクズだからクズの集団に惹かれるんだよな!」
「なんだと!? 自分だけは現実を知ってるみたいな面して、いつも勇敢ぶりやがって! 表に出ろ!」
「望むところだ! こてんぱんにしてやる、馬面が!」
の目の前で顔を突き出し、エレンとジャンが啖呵を切った。両腕を広げて二人の顔を離す。
「はいはい、喧嘩はダメだよ、落ち着いて」