第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
どうしようかと思っていたら、いつの間にかほかの訓練兵たちも集まってきてしまっていた。逃げたい気持ちがを仰け反らせる。
「な、何か用かな。君たち」
空席だった隣に、亜麻色の髪をした少年が少し横柄な態度で腰掛けてきた。胸許の紋章に首を伸ばして眼を凝らす。
「・デッセルか」髪を払って背凭れに腕を預ける。「現役の調査兵にお目にかかれるとはね。あんたの所に入団する気はねぇけど、どんなもんか話に興味はある」
「失礼だろ、ジャン! 俺たちよりも先輩だぞ!」
エレンが吠えた。
ジャンの物言いは年上に対する態度ではないが、注意できるほどは偉くない。降り注ぐ期待のシャワーを前にして観念するしかなかった。
言いづらいことがあると、どうしてか笑い顔になってしまう。
「期待を裏切るようで悪いんだけど、ボクまだ新米でさ」
エレンはきょとんとする。
「新米? 壁外調査は?」
「数日前に入団したばかりだから、まだ巨人すら見たことないんだ」
「憲兵団か駐屯兵団から移籍したのか?」
ジャンに訊かれては首を横に振った。
「何て言ったらいいんだろう、一般から? だからたぶん、君たちのほうが立体機動とかの技術は上だと思うよ。というかたぶんじゃないな、確実に」
「謙遜だよな? だって訓練兵より技術ないって……、そんなんで調査兵になんてなれないだろ」
敬語ではなくなってしまったエレンの笑顔はショックで引き攣っていた。
「そんなんでもなれてしまったっていうか」
は汗ばむ耳の裏を掻く。決まりの悪い思いをしていた。調査兵団に入ることを目指して頑張っているエレンに申し訳なく思う。
「……まじかよ」
魂が抜け落ちたようにエレンの肩がすとんと落ちた。の株は一気に暴落してしまったみたいだ。
踏ん反り返りながらジャンが笑い出す。
「死に急ぎ野郎がここにもいたよ!」
「死に急ぎ野郎?」
首をかしげると、腰に両手を添えた少女の声が背後から頭に落ちてきた。
「調査兵団に入りたい、って一年中言ってるエレンのあだ名。あんたの発言が謙遜かどうか、私は興味ない。もし本当だったとして、自殺願望者だと思ってジャンは言ったんだろうけど」