第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
「は?」リヴァイは力ない半眼をした。「恋人なんてめんどくせぇもん誰が作るか。店の女だ」
「み、店?」
顎が外れそうだった。いかがわしい店に違いなく、には理解できない世界だった。
「いっちょ前にも女に興味があるらしい。馴染みの店を紹介してやってもいいが」
「ぼ、ボクはそういう所へは行きませんからっ」
「初めての奴は、そう言って店の女どもを偏見の目で見るが、そこらの女より後腐れねぇし気が楽だぞ」
最低だ。不潔な目線でしかリヴァイのことを見れなくなりそうだった。が、これを理解できないということは、は男になり切れていないということなのだろう。
「嬉しくないアドバイスをありがとうございましたっ。でもボクは一生お世話になるつもりはありませんからっ」
「お前あれか」リヴァイが眼を大きくした。「まだ男じゃないのか」
男じゃないと言われて、バレたのかと心臓が飛び出た。「な、何を、ボクは正真正銘のおと」
「あれだろ、初めては好きな女と一流の宿で――とか夢みてんのか。要するに童て」
「わ――! わ――! わ――!」
大声を出してリヴァイの言わんとしたことをは打ち消した。公共のど真ん中で、しかも真っ昼間から何を考えているのか。
「うるっせぇな。迷惑だろうが」
眼を眇めてリヴァイは両耳に指を突っ込む。
「だって変なこと言おうとするんですもん」
「別に変なことじゃないだろう」数秒の沈黙が降る。「……なぜ顔を赤くしている」
ぱっと両頬を押さえた。の顔は茹でられたタコよりも赤い。
苦味のある表情でリヴァイは言う。
「気持ち悪いな、ほんとに、お前は」
本通りを折れた細道のところでリヴァイと別れた。体型よりも若干長めな黒のジャケットを、袖を通さずに両肩に掛けている彼の背中が行く細道は、何となく妖しげな店がぽつぽつと並んでいたのだった。
(男の人って、みんなああなのかしら。違うわよね)
細道からさらに裏路地のほうへ曲がっていったリヴァイを見届け、は気を取り直して本通りを歩き始めた。ここからは突き当たりを右へ、さらに右という、とにかく右に折れていけば南方駐屯地へ辿り着くらしい。