第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
ウォールローゼの市街を、こんなふうに歩くのは初めてだった。ワクワクを抑えられないは、たくさんの露店が連なる光景を眼に、右に左に忙しく頭を振る。
「歩くのが遅ぇよ。早く来い」
「脚が痛くて」
と言いつつ、早歩きで私服のリヴァイの傍らに並んだ。
「ほら吹きが。その辺の店に目移りしてるだけだろう」
「だってワゴンたっぷりに品物が盛られてるんですよ。どのお店も活気があっていいですね」
「いつもの光景だろうが」
もの珍しらしくしているをリヴァイは不思議がっているようだった。フェンデル邸で世話になっているあいだ、ほとんど外出しなかったは調査兵団本部へ来るときも馬車を使った。だから街の様子を知らなかったので、すべてが新鮮なのであった。
「帰りにあれを買っていこうかな」
水滴が瑞々しい柑橘系の果物を横目に呟いた。後頭部に注がれる視線が痛い。
「非番じゃないんだ。講義が終わったあとでも寄り道はなしだ。本部へ帰るまでが訓練だからな」
「分かってますよ」
まるで遠足の決まりごとみたいな文句だった。でもそういうリヴァイは何の用事があるというのだろう。
「リヴァイ兵士長はどちらまで行かれるんですか」
「俺は休んでくる」
「休む? 外で?」首をかしげたが、は、ああと手を打った。「公園のベンチで日光浴ですか。今日はぽかぽか陽気だから気持ちいいかもしれませんね」
「気持ちいいしか合ってねぇ」
え? とさらに小首をかしげると、リヴァイの斜めの視線と重なった。
「女に休ませてもらうんだ」
言われての時が少し止まった。言葉を理解して想像した結果、顔が赤くなってきそうだったが堪えた。別にいやらしいことではない。モテる男なのだから恋人くらいいるだろうし、そういう女性がいれば、そうゆう関係になるのも自然の流れだ。
でもなぜか、わざとらしい言い回しになってしまう。
「そ、そういう人がいて羨ましいです。ボクも恋人がいればなぁ。そしたら厳しい訓練も、もっと頑張れる気がするのに。つらいときに甘えさせてくれる人が早くほしいです」