第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
絡め取られていた腕を、ぱっと振りほどかれた。リヴァイの背中から滑り落ちたは尻もちをつく。
「うぅ」
「たっく、どんくせぇし運動神経はねぇ。加えて教え甲斐もねぇときた」リヴァイはくるりと向き直った。「もう今日はやめだ。疲れた」
見降ろしてくるリヴァイは怒ってはいなさそうだった。を泣かしたことで腹の虫が収まったか。ただ並々ならぬ疲労が、その万年隈のある目許に滲んでいたけれど。
訓練が中止になってはまた喜びが顔に出た。
「じゃあ部屋に戻ってもいいですか」
「おい。ほかの兵が訓練に励んでる中、お前は昼寝を目論んでんじゃねぇだろうな」
「ま、まさか、そんな殿様みたいなこと、思ってるわけないじゃないですか」
ひくひくと笑いつつ、つっかえつっかえに言った。図星だった。
滑稽なをリヴァイは能面でじっと見てきた。やがて瞼を落として浅く溜息をつく。
「どうも調子が狂う。なめてる奴を黙らせる躾なんざ、たくさんあるってのにな。どうしてこう甘くなるのか」
上目遣いしては打ち消す。
「……全然甘くないですよ?」
自分の態度にしばらく悩んでいたようだが、リヴァイの顔つきが締まった。
「訓練は中止といえど、のんびり過ごさせるわけにはいかない。周りに示しがつかん」
「何をしてればいいでしょうか? ハンジさんの資料を読むとか?」
「いや、訓練兵がいる南方駐屯訓練場へいまから行ってこい。受けてくるのは講義だ。椅子に座ってるだけなら身体も平気だろ」
地理に疎いは場所が分からない。
「どう行けばいいのか分からないんですが、地図とかありますか? 口頭じゃ忘れちゃうと思うので」
「俺も市街に用がある。近くまで一緒だから迷うことはない」
リヴァイが兵舎のほうへ歩き出した。
「着替えてくる。は訓練場だからそのままでいい。正門前で待ってろ」
「はい」