第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
「肩も脚もちっとも上がんねぇのかよ。そんなんじゃ訓練ができないだろ」
仁王立ちのリヴァイは腕を組んで溜息をついた。もしかすると今日は丸一日訓練が休みになるかもしれない。
「今日の訓練はなしだ、やった」リヴァイは棒読みで言い、「とか思ってんじゃねぇだろうな」
嬉しさがの口端に表れていたようだ。
「でもほんとにこれじゃ立体機動なんて無理です」
「お前の身体の筋肉痛が日に日に重症化していってるのは気づいてたが、毎日の訓練のあとに欠かさずストレッチはしてたんだろう?」
「しろ――なんて言われませんでしたけど」
呆れたような上目でリヴァイは短く息を吐いた。
「ほとほと疲れるな。何から何まで指導しないと行動できねぇのかよ」
「だって必要性も知らなかったんだもん」
ぶつぶつ言っては反抗的に唇を尖らせた。リヴァイの眼の色が、さっと据わったものに変わる。
「だって? だもん? 自分の立場が分かってんのか、よ」
「だって頑張ってるから筋肉痛になるんです。さぼってたら、いまごろピンピンしてますよ。それなのに溜息ばっかりつくから」
「俺に反抗するとは、いい度胸をしてる」
低音で言ったリヴァイは、砂利の音を鳴らしながらの背後を取った。
「な、なんですか」
何やら不穏な気を感知して後ろに顔を巡らす。
「痛くて身体が伸びないんだったな。ストレッチを手伝ってやる」
背中合わせになったリヴァイに両腕を絡めとられる。
「こ、こんなんでストレッチしたら痛いですよ!」
「いいや。なってしまった筋肉痛にもストレッチは有効だ。それに伴う痛みのほどは俺の知ったこっちゃないが」
そう言ってリヴァイはおじぎした。両足が浮いて、の背中から腰が弓なりに反る。合わせて悲鳴も上がる。
「痛い! 痛い! 痛い!」
「そうか、もっとか」
「ごめんなさい! お願いだからやめてください!」
炎症を起こしている筋肉が伸びる痛みは、無意識に涙が滲み出るほどだった。生意気なに対するこらしめでリヴァイはわざとやっているのだろう。