第19章 観覧車
ある日、ヒナギク博士にトゲピーの散歩を頼まれ、私とNでセントラルシティの公園へ連れていった。
トゲピーは人に対してトラウマがあったけど、研究所を頻繁に出入りする私たちには馴れてくれたみたいで、散歩中は怯えずに無邪気にはしゃぐ姿を見せてくれた。
公園をひとしきり歩き回った帰り道——
「観覧車ってスバラシイよね。キミもそう思うだろう?」
同意を求められ頷くと、彼は満足げに微笑んだ。
ゴンドラから眺める景色は快晴。セントラルシティの賑わいを眼下に、島全体を見回した。
遺跡や火山、氷河など、パシオにはあらゆるポケモンが生息する環境を再現したエリアがあり、まるでこの世界の縮図のようだ。
「観覧車はゆっくりだから好きだよ。景色もほんとにきれい…!」
この、パシオを一望できる観覧車は、今パシオに来ている移動式遊園地のアトラクションのひとつだ。
ライヤーさんが、観覧車が好きだというNの要望を叶えてくれたのだ。
せっかくなのでトゲピーも一緒に乗せたかったけど、ゴンドラはポケモンの同乗は禁止されていたので、トゲピーにはモンスターボールで休んでもらっている。
「ボクは観覧車が
大好きなんだ。円運動、重力、緻密な構造……それらが均衡を保ったまま静かに回り続けている。とても合理的で美しい…!」
「ふふ、よかったね、N」
難しい話は一切わからないけど、Nが静かに興奮しているのは伝わってくる。
「懐かしいな…トウヤとこうして乗ったのを思い出すよ」
と言って、イッシュでの思い出話をたくさん聞かせてくれた。トウヤくんというトレーナーは、出会ってからずっと気になる存在だったという。
「トウヤに出会った当時、ボクに生じたのは違和感だった」
「違和感って?」
そう聞くと、トウヤくんのポケモンの声を聞いたことで、それまで自分が見てきた世界、教えられた世界との齟齬が生じ、見えていなかった世界を知るきっかけになったとNは語る。