第16章 泣いてなんて、ないよ
「まぁ、アダ名なんてどうでも良いよ。それより、キミはここに何をしに来たの?
アポも取らないで、ライバルプロダクションに単身乗り込んで来るなんて…普通じゃない」
天の鋭い切り込みに、環は黙って俯いてしまう。
「だいたい、プロデューサーもプロデューサーだよ。それに最初キミは、四葉環と会う事をボク達に隠そうとしたよね。それはどうして?
…もしかして二人で、何か やましい相談でもするつもりだったんじゃないの?」
天が言う、やましい相談 とは…、いかがわしい内容を指しているのではない。きっと、引き抜きや 事務所移転の可能性を言っているのだろう。
芸能界という世界は、そういう汚い話が裏では平然と進んでいる。そういった事例は少なくない。
きっと彼は、私が 環の事務所に引き抜かれる可能性や、逆に私が環を八乙女プロに迎え入れる可能性を危惧したのだろう。
「な、んで…、なんで、てんてんに そこまで言われなきゃなんねーんだよ!俺が、えりりんに会いに来たって、べつにいーじゃんか!」
「よくないよ。彼は、ボクらのプロデューサーだ。キミに構っている時間なんてない」
「はぁ!?意味わっかんね!たしかに、今はTRIGGERのプロデューサーやってっかもだけど、いつかえりりんは俺のもんになるかんな!!」
「は?キミこそ何を言ってるの?そんな事になるわけがない。
それと今の発言は、やっぱり彼をキミの事務所に引き抜こうとしてると取られても仕方がないと思うよ」
「事務所とか引き抜きとか関係ねぇから!!もー!てんてん分からず屋過ぎだから!」
「分からず屋はキミの方だ!」
2人の子供のような喧嘩を、私達 大人組は一歩引いて見学していた。
『なんでしょう…私今、なんだかモテ気分を味わってます』
「いやお前、言ってねぇで止めてやれよ」
「あはは、まぁ2人とも まだ10代だから」青春だなぁ