第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
「はは!やっばい。オレら、めっちゃ褒められたじゃん」
「あの支配人、テンション上がり過ぎて大阪弁ヤバかったなぁ」
「だが、あれだけ賞賛されれば悪い気はしないな」
ライブは無事に終了し、私達は今夜の宿に帰って来ていた。彼らも疲れているだろうし、しっかりと体を休めて欲しいところなのだが。
どうして、私の部屋に集まっているのだろう。
その疑問を口にすると、悠は恐る恐るこちらを見る。
「な、なぁ春人。やっぱ怒ってるの?」
『え?』
「あぁっ、ハルを責めるな!責めるなら俺にしてくれ!俺が…つい、言っちまったんだからな」
しゅんと項垂れるトウマを見て、私にもようやく見当がつく。彼らはどうやら、巳波の不在理由をファンに打ち明けたことを叱られると思っているらしい。
「そうだな…。俺のことは、責めないでやってくれ」
「トラ!お前なぁ!」
「虎於!この裏切り者!」
『ふふ。誰のことも責めたりしませんよ。むしろ、今日の貴方達の姿からは私の方が学ばされました。
本当に、素敵なステージでしたね。お疲れ様でした』
3人は、目を大きくしてパチクリと瞬きをした。やがて、歯を見せ目を細めた。
『納得したらさぁ出て行ってください。明日は朝イチの飛行機で帰るんですから』
「わ、分かってるよ!用事は済んだし、さっさと出てってやるから!ふんっ…」
「んじゃ、おやすみー」
少し寂しそうな表情の悠。それに、ぐっと上へ体を伸ばすトウマ。2人は、連れ立って部屋を出た。
…私は、いつまでもベットの縁に腰掛けている虎於に視線を送る。
『で?どうして貴方は居座っているんです?』
「……えっ!出て行けって、俺にも言っていたのか!」
『なに本気で驚いた顔してるんですか!どうして自分は例外だと考えていたのか謎です!』
私は驚きの表情を浮かべる虎於も、部屋から追い出したのだった。