第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
本番の直前。3人に対し、私は最後の確認作業を行っていた。
『では、フォーメーションはリハの通りでお願いします。急な変更ですが、貴方達なら十分に対応可能です。
パフォーマーが1人になってしまうことで、虎於にはいつもよりも負担が掛かってしまいますが、よろしくお願いします』
「まぁいいさ。やってやる。その代わり、ライブ終わりにとっておきの褒美を期待してるぜ?」
『…エッチなこと以外なら』
私の言葉をジョークだと受け取ったのだろう悠とトウマは、からからと笑った。虎於だけがつまらない、という顔をしている。
『あと…棗さんの不在を、貴方達の口から伝えさせてしまうこと。謝罪をさせてください』
「いいってば。それ、もう何回も聞いたし」
「あぁ!任せとけ」
「巳波は急病。命に別状はない。俺達が客に伝えるのは、それで良いんだったな」
私は頷く。
本来であれば、ファンに対しアイドルに嘘を吐かせるなど言語道断。私の意志にも反することだ。しかし、今回ばかりはそうは言っていられない。この方法が、1番 波風が立たないと判断したのだ。
罪悪感が私の中に渦巻いたまま、いよいよ幕が上がる。
熱気に包まれる会場に、音楽が鳴り始めた。彼らは、いつもと変わらぬ様子で悠々とステージへと消えた。
大好きなアイドル達が歌い踊っているというのに、客席は騒ついていた。それもそのはず。ŹOOĻが、いつも通りの姿でなかったから。
それでも3人は一曲を歌いきる。そして、並列して客席を見下ろした。ファンも不安げな顔をして、彼らの言葉を待っている。