第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
翌日。決戦の地、Zepp Osakaに足を運んでいた。そして私はリハーサル中の3人から離れ、支配人と向き合う。
「どうも中崎さん。ご無沙汰しております。貴方がTRIGGERの元を離れたと聞いた時は耳を疑いましたが、どうやら本当だったのですね」
きっと、今すぐにでも本題に入りたいだろうに。こういう当たり障りのない話から入ってくれる、彼の人となりが窺える。
そんな彼に、私は無言で頭を下げる。そして彼もまた、無言で私を見つめていた。
『この度は、ŹOOĻを4人揃えてこちらに伺えなかったこと。心から謝罪いたします。その責任は、全て私にあります』
「そうですね…でもまずは、その理由をお伺いしても?」
『はい。棗巳波は急病で、ライブを行える状態ではなく…』
「えぇっ!急病?急病って!?巳波の奴 死んじゃうの!?」
私の説明に反応したのは、支配人ではなかった。いつの間にか近くにまでやって来ていたその男の方へ、私達は勢いよく振り向く。
「でもおかしいなぁ。そんな話…僕は聞いてないんだけど」
まさか、了がここに来ていたとは。どうすれば、どんな言葉を並べれば、彼を少しでも宥(なだ)められるか。私は頭をフル回転させる。しかしこちらが答えを弾き出すより早く、了は私をずんずんと壁際へと追いやった。それから、もう後がない場所で肩をドンを突き押す。
『っ、』
「どういうつもりだ?この僕に、何も告げずŹOOĻをバラバラにしたのか?そんなことをすれば、どうなるか分かっているだろうに。あぁ、さてはお前…トチ狂ったのか?」
首元に伸びる手。そのまま了は、手に力を込めた。肉に指が食い込み、気道が閉まる。
『 っ…か、は』
「月雲社長!」
見ていられなかったのだろう。支配人は堪らず了を私から引き離す。