第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
私達はそれぞれ たこ焼きを手に持ち、目の前に設置された丸ベンチに腰掛けた。
「なんか、本場のたこ焼きって思ってたのと違う。これ、ちゃんと焼けてんの?」
「さすがに生焼けってことはないだろ。でも俺もなんかこう、もっと丸々っとしてると思ってた。意外にべちゃっとしてんだな」
「あぁ。爪楊枝で刺して持ち上げるのが、難しいくらいだ」
『知り合いの大阪人がこう言ってました。“ 大阪のたこ焼きはやっぱり、ぺちゃ焼きやでぇ! ” と』
3人は、私の似非関西弁を前に白い目を向けた。やがて、空腹の限界にきた悠がいただきますと、それを口の中に放り込もうとする。私は慌ててそれを制した。
「なに!うっとおしいな!」
『そんなふうに生半可な覚悟で、食べてしまっていいんですか!?そのたこ焼き…中身、200度あるんですよ』
「あるわけないじゃん!バカ!」
悠は制止を振り切り、ついにたこ焼きをふーふーもせずに口へと入れた。
「〜〜〜っっ!!!」
「ハ、ハル!!おい大丈夫か!!」
「水を飲め早く!」
立ち上がり、腰を折ったり天を仰いだりしながら、悠は悶絶した。見事に大阪の焼きたてたこ焼きの洗礼を受けたのだ。
「っ…あった…200度…あった」
『だから言ったでしょう』
「ハルの犠牲は無駄にしないからな。俺は教訓を生かして、半分に割ってから食う」
『狗丸さん。それは問題があります』
「え、問題?あるか…?」
『タコは、爪楊枝では半分に出来ないでしょう。ならば、いつのタイミングでタコを食べるのですか?前半に食べてしまえば、後半は味気のないタコ無しのたこ焼きになってしまいます。後半に残しておけば、前半が味気ないものになってし』
「あぁもう分かったよ!!丸のまま食うから!」
トウマは勢いよく、ふーふーもしないで丸々ひとつを口に放り入れた。
「〜〜っっ!!!う、上顎が…!上顎がもってかれたぁ!!」
「トウマーー!」
「お、恐ろしい食べ物だな…たこ焼きとは」