第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
「おぉ!着いた!大阪!」
「着いたなぁ!大阪だ!」
まるで観光客気分ではしゃぐ、悠とトウマ。スタスタと歩く私と虎於の後ろを、慌てて追い掛ける。
「ふぅん。大阪って言っても、まだソースの匂いはしないんだな」
「確かに!」
「あのなぁお前ら…大阪に降り立った瞬間から、ソースの匂いがしたら怖いだろう」
何を期待していたのか、悠とトウマはがっかり顔だ。ソースの匂いが大阪中を包むほど、そこかしこでたこ焼きが焼かれていると思っていたのだろうか。
『でも、そうですね…せっかくですから、食べに行きますか。たこ焼き』
私達がやって来たのは、ザ大阪とも言える地、道頓堀。から、少し外れた場所。道なりにずらっと、たこ焼きの屋台が並んでいた。
「うわっ、すごいな!本当にソースの匂いがする!」
「ミナ!ほら見ろよあそこ!実際に焼いてるとこ見れるぞ!」
「マジで?やっば!串捌き尋常じゃない!」
「あそこまでの熟練技を身に付けるには、相当な鍛錬を積んだんだろうなぁ」
悠とトウマは、職人の手さばきに夢中であった。私はそんな2人を一旦回収し、目当ての店へと向かう。
そこは、屋台の上に大きな赤鬼の人形が飾られている、この辺りでは有名なたこ焼き屋だった。
悠は、なんで赤鬼?と首を傾げたが、その疑問に答えてやれる人間はいない。
人気店だけあって既に人が並んでいたが、回転率が良いのか順番はすぐに回って来た。
『私は、前に来た時にソースを食べたので、今回は塩にします。皆さんは?』
「へぇ。色んな味があるんだな。でもやっぱ最初はソースで!」
「なら俺は醤油にするから、ちょっと交換しようぜ!」
ここで自然にシェアを申し出るトウマ。彼はきっと、女にモテるのだろうなと勝手に想像する。
「トラは?」
「そうだな…じゃあ、せっかくだから全種類もら」
『ポン酢でお願いします』
こんなところで、金持ちにしか許されない “ ここからここまで ” を発動されては困る。