第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
しばらくした後、私達も自分たちの飛行機へと搭乗する。まとめて持っているチケットを取り出し、座席の位置を確かめる。すると悠が、いの一番に奥へ行く。
「オレ窓際。いいよね」
『では、私はその隣ですね』
「そうなの?」
『はい。そして私のもう片方の隣は狗丸さん』
私を見下げ、首を傾げながらもトウマは言われた席に腰を下ろした。三列シートからあぶれた虎於は、不服そうではあるが後ろの席に移動する。
それから私はまず、窓の外を見ている悠に向かって手を差し出す。
「なに?この手」
『手を繋ぎましょう』
「はぁ!?あのさぁ、オレもう17なわけ。飛行機が怖いとか思ってないから。馬鹿にすんなよ!」
『馬鹿にしないでください!怖いのは私の方ですから!』
「え、あ、そうなんだ…」
悠は私の圧に負け、戸惑いながらも手を握ってくれる。
そして次に、空いている手をトウマに預ける。
「お前みたいな奴にも、意外な弱点があるもんだな。まぁ手を握るくらいいいけどさ…ってか、もう既に手の平びっちゃびちゃじゃねぇか!!大丈夫なんだよな!?」
答える余裕はなく、私はただ離陸までの地獄の時間を耐える。すると後ろの席へ行った虎於が、こっそり話しかけてくる。
「なぁ。隣に誰かが座ったんだが…俺の席は、ここで合ってるのか?」
「トラ!自家用ジェットじゃないんだから当たり前だろ!そこで間違いなく合ってるから大人しく座っててくれ!」
「そうか…」
訝しみながらも、虎於は後ろへ引っ込んだ。悠は窓に張り付き、リクライニングを倒してご機嫌だ。
「早く飛ばないかなー」
「あぁこらハル!離陸前はリクライニング倒したら駄目だ!」
「え、そうなの?」
訝しみながらも、悠はリクライニングを元の位置戻す。すると再び虎於が後ろから現れ、こそっと言う。
「脚を伸ばそうとしただけで、前の席につかえるんだが…俺の席は本当にここで合って」
「合ってる!!合ってるから!頼むって!静かに座っててくれるだけでいいんだよ!」
トウマお母さんは、大変そうだった。