第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
「おっそい!!」
私を出迎えたのは、痺れを切らした3人であった。事前に申し合わせていた場所へ姿を現わすなり、悠は私に詰め寄った。
「約束の時間よりめっちゃ遅かったじゃん!どこで道草食ってたわけ?」
『あぁ悠。そういう時は、本当はすごく待っていたとしても、オレも今 来たところ。って笑顔で言うものですよ』
「え…そうなの?」
「ふ、当然だ。それが男の甲斐性って奴だろう」
「いやいや、それが適用されるのってデートの待ち合わせくらいじゃねぇ?」
「じゃあ違うじゃん!春人のバカ!変なこと言うなよな!」
悠を揶揄い癒されたところで、早く伝えるべきことを伝えなければいけない。
こちらが報告をする前に、我慢の出来なかったトウマが神妙な面持ちで問い質す。
「それで、どうなったんだ?ミナがここに居ないってことは、成功したんだよな?」
『はい。棗さんは、ノースメイア行きの飛行機に乗っているはずです』
トウマ、悠、虎於の3人は、それを聞くなり互いの顔を見合わせる。そして、よしっ!と 小さくガッツポーズを作った。
私達はその足で、滑走路が一望出来る屋外へと出て来た。高く聳(そび)える金網の向こうでは、国外へと飛んで行く飛行機が何機もいた。
金網をしっかりと両手で掴み、飛行機を目で追う悠は、まるで子供みたいで可愛らしかった。やがてその中の一機を指差し言う。
「あれかな!巳波が乗ってる奴!」
『そうですね。あれで間違いないと思います』
「…そっか。良かった。行ってらっしゃい。巳波」
彼の呟きを合図にするように、その機体は滑走路でスピードを上げる。
「会えるといいな」
轟音に掻き消されそうだったが、虎於のその優しい言葉を、確かに聞いた。ついに空へと旅立った飛行機を見つめたままで、私は首を一度 縦に動かした。
私達の周りには、同じように飛行機を見ている人が数人いた。彼らはどんな心境でそれを眺めているのだろう。ただ、飛行機が好きだからか。それとも、私達と同じように誰か大切な人を見送っているのだろうか。
「春人。ありがとう」
トウマは、小さくなっていく飛行機を見つめながら呟いた。私は小さく首を横に振る。
巳波と4人を乗せた飛行機は、やがて大阪とは全然違う方向の空に消えた。