第98章 気付かないふりをするのがマナーでは?
営業スマイルを全開にして差し障りのない会話を繰り広げてしまうのは、私達 マネージャー業を勤める者の悪い癖だ。環が止めてくれて良かった。
「そうだった。悪い、立ち話をしてる時間は無いんだった」
万理が言うと、壮五と陸の2人が申し訳なさそうにこちらへ歩み寄る。
「そうなんです!オレ達これからノース」
「り、陸くん!それは極秘にしなくちゃって社長や万理さんから言われて…
あれ?でも、中崎さんになら話しても大丈夫…なのかな」
「え、えーと、オレ達これから…ひ、秘密任務に向かうところなんです!」
「おー!それ、カッケーな!秘密任務!正義の味方みたいじゃん」
わちゃわちゃと好き勝手に話す3人。私は、陸を相手取り質問を投げる。
『…任務に当たるのは、このメンバーだけですか?』
「残りの3人は、現地で合流するんです。これは、オレ達にとってとっても大切なことで…メンバー全員、揃ってないと意味ないから…。えっと、とにかく…頑張ります!」
環も壮五も、決意を新たにした陸を真剣な眼差しで見つめていた。その表情と、さきほどの言葉だけで、察するには余りある。
彼らは全員で、ナギを迎えに行くのだ。
『お引止めして、すみませんでした。きっとナギさんは…貴方達を待ってます。だから早く行ってください。ほら、もう搭乗手続きは始まってますよ』
ノースメイア行きのゲートを指差した私を、4人は驚いた顔で見つめた。
『あちらは極寒でしょうから、特に七瀬さんは体調に気を付けて。では…頑張ってください。応援しています』
そう言い残して、私は彼らに背を向けた。
「…なんで、俺らがナギっちを迎えに、ノースメイア行くこと知ってんだろ…エスパー?」
「もしかしてオレ、口滑らせちゃってました?」
「ううん。陸くんは言ってなかったよ。相変わらず…不思議な人だよね。中崎さん」
「と、とりあえず、搭乗手続きしちゃおうか」
(いや、あれはもう不思議とか通り越して不気味だろ…。一体、どこで誰から情報手に入れたんだか…)