第93章 選んだのは、こういう道だろ
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身の回りの物をまとめた段ボール箱を抱え、大層ご立派なビルを見上げる。今日からここが、私の職場となるわけだ。
『 D.C 』
ポツリと1人、呟いた。
もう、戻りたくはなかった。最初に戻されることなく、出来ることなら、TRIGGERと最後まで駆け抜けたかった。
「ダ・カーポ。確か意味は、振り出しに戻る。だったか」
『独り言に答えないでもらえますか。御堂さん』
「無理だな。女が零した言葉に言葉を返すのは、俺の趣味だ」
『私がこの格好をしている時は、女として見ないで欲しいのですが』
彼は、イエスともノーとも答えない。代わりに、私から段ボールを取り上げた。女扱いをするなと言った直後で、この行動。どうやらこの男を私が御するのは不可能らしい。
虎於は、私を社内へと招き入れた。まず通されたのは、了が私の為に用意した仕事部屋であった。
1人で作業するには広く、重厚な雰囲気は落ち着かない。そもそも彼が私に1人部屋を用意するなど、違和感を覚えざるを得ない。
とりあえず、監視カメラや盗聴器が仕掛けられているものとして振る舞おう。
「この部屋…内鍵があるんだぜ?」
『そうですか』
「つまり、中から鍵を掛けられるってことだ」
『いや、それくらい分かりますよ』
「おいおい。分かっててその反応か?面白みに欠ける奴だ」
白ける虎於。
はぁ すみません。私は、デスクに荷物を納めながら雑に言った。それが気に障ったのだろうか。彼は私に詰め寄った。
「暇を潰せない玩具は返品対象だな。了さんも、さぞがっかりすると思わないか?」
『…テイク2貰えます?』
「あぁ。喜んで。
この部屋…内鍵があるんだぜ?」
『や、やだ…虎於さん、なんですぐそういうイヤラシイ言い方するんですかっ?は、恥ずかしい、じゃないですか』
「わ、悪くないな。思ってたより、かなり、良くて正直引いた」
これから過ごす彼らとの日々が、思いやられる。