第93章 選んだのは、こういう道だろ
“ 近くにいるからこそ気付けない ”
私には、天のその言葉の意味が なんとなく分かる気がした。
大切な人が傍にいてくれる。それは、本当に恵まれた環境だと思う。しかしその強過ぎる幸福は、時として人の目を眩ませる。身近にいるのに、些細な変化を見逃してしまったり、感情の起伏を読み取れない。なんてことが、起こり得るのだ。
楽と天には伝わって、龍之介には届かなかったのが、その根拠である。
私の方にも、間違いなく甘えがあったのだ。彼なら分かってくれる。彼なら大丈夫だ、と。
甘い甘い日常にさえ、いつの間にか慣れてしまうのだから やはり人は恐ろしい。
でも、それに気付けて良かった。私は今日から、改めて龍之介を大切にしよう。心からそう思えた。
もしかすると彼の方もまた、そう感じてくれているのかもしれない。
「俺…春人くんは、ずっとTRIGGERの傍にいてくれるって、そう思ってた」
「うん」
「ずっと一緒に、頑張っていけたらって。思っ…」
「龍。大丈夫。ボクらの絆は、そんなに安くないでしょう。ボク達なら大丈夫だ。たとえ離れていたとしても、一緒に闘える。もう一度言うね。
ボク達の絆は、そんなに脆く弱いものじゃない」
天の力強い言葉に、龍之介は覚悟を決めたようだ。ぐっと顔を上向ける。
「皆んな、ごめん。俺が間違ってた。君が覚悟を決めて、楽や天もそれに続いた。それなのに、俺だけが腹を括れなかった。でも、もう大丈夫。今ならちゃんと言えるよ。
春人くん、頑張って。
俺はいつでも、どこにいても、ずっと君の味方だから。それだけは、忘れないでね」
龍之介の続いて、楽と天もエールをくれる。
「TRIGGERと、事務所のことは気にすんな。俺達の手で絶対に守る。約束する。
お前も、無理だけはすんなよ。しんどくなったら、潰れる前に俺らを頼れ。な」
「プロデューサー。やること全部やって、キミが自由の身になったら、すぐにボク達のところへ帰ってね。待ってるから。
早くしないと、TRIGGERはキミ抜きで天下取っちゃうかも」
3人は、私の前に立ち並ぶ。
「行ってらっしゃい。プロデューサー」
「行って来い!春人!」
「春人くん。行ってらっしゃい」