第93章 選んだのは、こういう道だろ
「アンタ、たまーに行動が突拍子もないわよね。驚いちゃったじゃない」
『言いたいことを言えてスッキリしました』
私達は再び並んで歩き出す。諌めるような言い方をする割に、彼の声は優しかった。
『もしも、の話をしても良いですか』
「あら珍しい。でもいいわよ、聞いてあげる」
『もし私が色んなゴタゴタを全部片付けた後、ここへ戻って来たいって言ったら…
社長は、また私を雇ってくれるでしょうか』
「なによ、その下らない質問は。そんなの、当たり前じゃない。
だってアンタ1人がうちにいれば、作曲家にプロデューサー。振付師 さらにはボディーガードと運転手。それだけ熟してくれるのよ?どれだけ人件費が浮くと思ってるの?」
『!
あはは、私、めちゃくちゃコスパ良いですね』
「ふふ、でしょ?
だから、必ず帰っていらっしゃい。アタシも社長も、その日を待ってるわ」
ありがとうございます。私は俯いて、小さな小さな声で呟いた。
そして、いよいよ3人が待つ場所へと到着した。しかし姉鷺は、早々にその場を立ち去ろうとするではないか。そんな背中に、私は不安げな声をかける。
『え、ちょっと姉鷺さん。話に参加してくれないんですか?』
「しないわよ。アタシだってこれから忙しくなるの。準備にいくら時間があっても足りないんだから」
『まぁそう言わずに。場に居てくれるだけで良いですから』
「あのねぇ、甘えるんじゃないの!あの子達に打ち明けるのが怖いからって、他人を頼らない。
自分で決めたことなんでしょう?だったら、しっかり自分の言葉で真正面から説明なさい。それで、3人からたっぷり愛のある叱咤を受ければ良いわ」
じゃあね。そう言って、彼は颯爽と去って行った。
『…最後まで格好良い先輩だったなぁ』
呟きの後、私は自分に気合を入れて、ドアノブを引いた。