第93章 選んだのは、こういう道だろ
正直、ありがたかった。退社を止められなかったことも、私がツクモでこれからどんな目に合うのか詮索されなかったことも。
きっと彼には分かっていたのだろう。それらの話をすることで、私がより悲しい気持ちになってしまうのだと。
だが、彼が述べた内容に、1つだけ誤りがあった。それは…
私には、自分を犠牲にする腹積もりなど、全くないという点だ。
「これから、あの子達のところに行くのかしら」
『はい』
社長室を先に出た私を、姉鷺が遅れて追いかけて来る。彼とこうして肩を並べて歩くのは、もしかするとこれが最後になるのかもしれない。
「納得、するかしらね」
『納得してくれなくても、私の未来は変わりませんよ』
いつの間にか、ここが自分の居場所となっていた。こんな気持ちで八乙女プロを離れることになるなんて、あの時は思いもしなかったと感慨に浸る。
「あの時は、こんなことになるなんて予想もしていなかったわ」
『私も、同じことを考えていました。貴方にここへ連れて来られた時は、全てが憎らしかったのに。
八乙女プロダクションも、八乙女社長も、貴方のことも。嫌いで嫌いで仕方なかった』
「あら、言ってくれるじゃない。それで、今は?今も、アタシ達が憎くて仕方がないのかしら」
姉鷺の言葉に、ピタリと足を止める。そして、踵を返し社長室へと舞い戻る。
ノックもなしに開けられた扉。飛び込んで来た私を、宗助は驚いた様子で見つめた。
『私は、ここが好きです。貴方も、姉鷺さんも、TRIGGERも!大好きです。
社長。私が社長と心から呼べるのは、この先ずっと 貴方1人。
どうか、待っていてください。ツクモに行き、私は必ず…了をヤります』
「よし!ヤれ。ヤってしまえ!しくじるなよ!」
『はい!』
「社会的に!社会的にヤるってことよね!?そうよね?そうなんでしょ!?」