第23章 high
ー研磨sideー
いつもは微熱の時点でもう、しんどいのに。
なんか今日はやけに元気な自分がいる。
それにすごい穂波が欲しい。
合宿中からだったけど、それに加えて今身体がどんどん熱くなっていってるから、
穂波と繋がったら蕩けそう。あー シたい。
Into the wildっていう映画を観ることにした。
実話を基に作られた映画らしい。
穂波は何度か観たって言ってた。
静かで、淡々としてて、でも引き込まれる。
いい映画だった。観た後も余韻に浸れる感じ。
映画が終わってからもしばらくぼーっとした。
熱があるのもあると思う。
穂波は静か。
いつもうるさいことはないけど、でも静かな時の穂波ってほんとに静か。
心の中がほんとに静まり返ってるんだなって感じる。
いつまでも隣にいれる気がするし、
いつに間にか消えちゃってそうな感じもする。
静かにすくっと立ち上がり、部屋の外に出て行った。
しばらくすると、ギターを手に帰ってきた。
K.Yairiって書いてある。
ベッドの淵に腰掛けて
ポロポロと音を鳴らす。
チューニングを合わせてるのかな。
少ししてから、曲を奏で始めた。
父さんが小さい頃からよく部屋で流してたやつだ。
Blackbird。ポール・マッカートニーの。
これ、好き。
2回、慣らすようにギターだけを弾いた後、歌をのせはじめた。
穂波が小さく口ずさむのはいっぱい聞いてきた。すごく好き。
でも今はもうちょっとだけ、外に向かって歌ってる感じ。
あー心地いい。
歌い終わって少しぼーっとして、
それからまた聞いたことのある曲を弾き始めた。
ほんとに父さんと趣味の合うとこがあるんだな。
全部じゃなくって、ある部分がって感じ。
…まるとまるの重なる部分って、前穂波が言ってたけどそんな感じ。
おれと穂波のまるとまるが重なる部分って何なんだろ。
実はあんまりない気がする。
…でもそもそもがおんなじとこにある気もする。
「…この曲なんていうの。父さんの部屋で流れてた」
『calico skies。ポールのギターって色っぽくて好き』
「…色っぽい」
確かに。どっちも色っぽい。