第23章 high
わたしが水を飲んだのを見届けると、
研磨くんはくいっと腕を引いて抱き寄せてくれる。
「穂波、おはよう」
『研磨くん、おはよう』
「…おれの部屋に穂波がいる」
『…?』
当たり前じゃないけど当たり前なことを研磨くんが呟く。
『…ん。朝起きて研磨くんが隣にいるだけで幸せなのに、
研磨くんのお部屋だなんてわたし、それだけでほわほわしてる』
「…ん」
首の後ろに手が回されて、優しくキスをしてくれる。
「下、降りよっか」
『…ん』
身なりを整えるといっても、合宿帰りでジャージと寝巻きしかカバンにはないし…
研磨くんに借りた部屋着のまま下に降りて、顔を洗って髪をとかして…
包丁がまな板に当たる心地よい音の響くキッチンに向かう。
「…あ、穂波ちゃんおはよう。寝れた?」
『はい、ぐっすり。ゆっくりさせてもらってありがとうございます』
「いえいえ、研磨ひとりだったらわたしが家にいる間には絶対起きてこないよ。
合宿後なんて、絶対昼前まで寝てる。最近は無くなったけど、中学の時はよく熱出してたし」
『…そうなんだ。 研磨くんは熱出すとやっぱりりんごですか?』
台所のお手伝いをしながらお話をする。
研磨くんはぼけっとソファに座ってる。
「うん、りんご。りんごジュース。柔らかい卵うどん。卵がゆ。かな。
具合によってあとの二つは食べたり食べなかったり」
『覚えておきます』
「もー、ほんと。穂波ちゃんみたいな子に出会えるなんて奇跡としか…」
『それはそのままお返ししたい言葉です。研磨くんみたいな人がこの世界にいるなんて…』
「あはは、穂波ちゃん規模が大きくなってる。研磨はただの強情な高2男子だよ」
愛のある、言葉。
嫌な気持ちにはならない。
こういう言葉って、ほんと極端に分かれる。
気分が悪くなるのと、
愛があって微笑ましいのと、
あとなんとなく言ってるやつ。
言葉ってほんとに大事だな、と思う。
気持ちの乗せ方。
そうこうしてたら朝食の準備が整った。