第94章 抗うもの
「え__」
横を見る。次の瞬間轟音が風と共に大地を揺らした。
燃え盛る炎を大地ごと抉り、剥き出しになった地面が海へと通じている。
その先に見えるのは巨大な船。
「自由のため共に戦う意志のある者はこの船に乗れ!」
どこかで聞いたことのある声が響いた。
力強いその声に人々は希望を見出し、我先にと船へ続く道を駆けていく。
「よかった……」
これで彼らは大丈夫だろう。
あとはエースやルフィが無事にダダンたちと合流できたか確認しなければならない。
「水琴!」
「ドグラ……?!」
南東の森にいるはずの彼らを目にし水琴は驚き駆け寄る。
その背で顔を血で濡らしたルフィを見て身体を強張らせた。
「ルフィ!いったいどうして__」
「ブルージャムの奴らだ!あいつらルフィに切りかかりやがって」
「エースとお頭がまだ残って相手してるんだ!」
「そんな……!」
聞いた内容に水琴は傍を離れたことを後悔する。
なぜ最後まで一緒について行かなかったのか。
予想以上に炎の広まる勢いが早かったなんて言い訳に過ぎない。
ドグラの背で弱々しい呼吸を繰り返すルフィにそっと触れる。
「ごめんね、ルフィ……」
「水琴……エースを……」
「うん、任せて」
ルフィをお願い、とドグラに言葉をかけ水琴は炎の海に再び足を向ける。
「水琴、お前も気を付けニーと!」
「分かってる。みんなは先に小屋に帰ってて!」
風を生み炎の壁を飛び越える。エースの気配をひたすら探しながら、水琴は駆けた。
熱い。
苦しい。
風であるこの身体は瞬く間に熱に蹂躙され既に活動限界を超えている。
それでもこの炎の中にエースやダダンが取り残されていると思うと、足を止めるわけにはいかなかった。
「エース……」
お願いだから無事でいて。
風を飛ばし、水琴はひたすらに祈った。