第94章 抗うもの
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「早く!みんなこっちへ!」
炎の中水琴は必死に逃げ惑う住人たちを避難させるべく声を張り上げていた。
愚かにもゲームだと言って住人を襲おうとする海賊を風でノし、炎の少ない南東の森へと誘導する。
しかし炎の勢いは止まることを知らず、グレイターミナルを抜け出ることすら困難になってきた。
そろそろ自分も脱出を考えないとまずいかもしれない。熱に冒され始めた身体にだんだんと危機感を覚えるも目の前で助けを求める人の数は一向に減る様子を見せない。
「いてぇ…苦しい……」
「なぁ、どっちに行けばいいんだ?!」
「落ち着いて、大丈夫です。煙は吸わないように、向こうの方へ」
炎の勢いが増すごとに人々の混乱も大きくなる。ギリギリのところで保たれている一線を越えぬよう、水琴は努めて淡々と誘導を繰り返していった。
「この先を抜ければもうじき森に__」
水琴の言葉を遮るように炎が壁のように燃え盛り行く手を遮る。
その勢いにさすがの水琴も躊躇した。
「もうだめだ!おれたちはここで焼け死ぬんだ!」
「いやだ、死にたくねぇ!!」
「ッ皆さん、落ち着いて!」
緊張の糸が切れたかのように一気に広まる混乱に水琴だけで対応するのは無理に等しい。
風で炎を吹き飛ばそうにもここまで燃えてしまってはただ炎を煽るだけで何の意味もないだろう。
どうしたら、と唇を噛む水琴の髪を風が揺らした。