第94章 抗うもの
__いい。基本は“よく見る”こと。これは能力関係なく戦闘においては重要だからね。
いつかの日常がふと思い起こされる。
まだ水琴と二人で尻尾取りを行っていた頃のこと。
休憩がてら受け売りだけどと前置きを入れ始まる講義の中で、水琴がよく言っていたこと。
__人間、誰にだって型っていうのが存在するの。癖ともいうかな。それをどれだけ早く把握して、対応できるかが勝敗を分けることもあるんだよ。
本人すら気付いていない、無意識下のそれ。
それはある一定の法則に基づいて行われるものだったり、動作を滑らかに繋ぐために取り入れられているものだったり。
無意識であればあるほど、それを崩された時人は隙が出来るのだと。
エースはじっと見続ける。右、左、上、下。
すぐ傍を剣先が掠めていく。手足が切れ、血が流れる。
それでもエースは目を離さなかった。
「どうした!やっぱてめェも口だけか!ただ上を見るだけで現状に甘んじてるあのゴミどもと同じか!」
先程とは逆に猛攻を仕掛けてくるブルージャムは防戦一方のエースを挑発するかの如く斬撃と共に言葉をぶつけていく。
「オレは違う!世界を呪い、貴族を呪い、オレを見限った全てに復讐するために、こんなところでおめェらみてェなゴミに邪魔されるわけにはいかねェんだよ!!」
まるで自分に言い聞かせるかのように、ブルージャムは呪詛を吐きながらダダンの大斧を脇に流し、飛び込んできたエースを足で蹴り飛ばす。
痛みで軋む胸を押さえ、エースは揺らめく炎に照らされたブルージャムを倒れた地面から睨み上げた。
「__そうだ。おれは、お前とは違う」
呪わなかったことがあるだろうか。
世界を大航海時代に引きずり込んだ海賊王を憎み。
母親を死ぬまで追い詰めた海軍を憎み。
ただその血を継いだというだけで存在を否定する、民衆を憎み。
いつか自分を否定したすべてを見返してやると、暗い暗い闇の中にいた。
あの時までは。