第94章 抗うもの
「__女に、子ども」
自身に挑むエースたちを見てブルージャムは愚かだと低く笑う。
「少し腕に覚えがあるだけで過信すると血を見るぞ。戦場で生き残るのは……“強者”と“臆病者”だ。
__“勇者”は死ぬと相場は決まってる」
「なら問題はねェ」
悠然と構えるブルージャムに対してエースもまた鉄パイプを握りしめ体勢を低くする。
「おれは、勇者じゃねェからな」
「なら、ただの馬鹿か」
足に力を込め駆け出す。低い位置から放った鉄パイプはサーベルで簡単に弾かれた。
間髪入れずダダンの大斧がエースをさばいたブルージャムの上空より振り下ろされるも、それもまた避けられてしまう。
その後も続くエースとダダンの隙を与えぬ猛攻もブルージャムは悠々と躱し二人を翻弄した。
「威勢が良い割にはその程度か?」
笑わせる、とブルージャムはエースをせせら笑いサーベルを構え大きく腕を引く。
エースの胴を薙ぐかに見えた剣筋は寸でのところで縦に構えた鉄パイプにより阻まれた。
重い衝撃が鉄パイプを通してエースに伝わる。踏ん張ることができず、エースはそのまま振り抜かれ横へと吹き飛ばされた。
近くの崩れかけた家屋に突っ込み、舞う埃で思わず咳込む。熱せられた空気に肺が悲鳴を上げるのが分かった。
あまり勝負に時間をかけることは出来ない。立ち上がろうと視線を上げたエースの目にサーベルを構え突進してくるブルージャムの姿が映った。
一気に詰められた距離に受けようと構えるが間に合わない。火花を散らしそのサーベルを受けたのはダダンの大斧だった。
「なにぼォっとしてんだい!寝こけるのは帰ってからにしな!」
「うるせェな……!」
ダダンの叱咤にエースは飛び起き再びブルージャムへと立ち向かう。
攻撃の合間もその一挙手一投足を見逃さんとエースは常に観察し続けた。