第94章 抗うもの
「ぎゃああ!!」
赤が散る。血の染まるナイフと目元を押さえ地面に転がるルフィの姿にエースの中でどくりと何かが産声を上げた。
耳元で鼓動がうるさく脈を打つ。赤く塗れるナイフを天へと掲げ、海賊が真っ直ぐ弟の胸を刺し貫こうとしている場面が妙にゆっくりと両の目に映った。
どくん、と生まれた何かが再びその存在を主張する。
身を任せろと。本能に従えと。
堪えようもない衝動のままに、エースは吼えた。
「ルフィに手を出すなァァ!!!」
空間が重く揺れた。
そのあまりの衝撃にルフィを襲おうとしていた海賊はもとより、周囲を囲んでいた手下が次々と倒れる。
突然のことにエースは呆然と倒れ伏した海賊を見下ろした。口元から泡を吐いている者までおり、完全に意識を手放しているのが分かる。
これを、自分がやったのか?
「何をしやがったうさんくせェガキが!!」
首根っこを掴まれエースは地面へと叩きつけられる。見上げた先には怒りに染まったブルージャムの巨体があった。
「てめェも能力者だったのか!」
「っ違う……おれは、能力者なんかじゃ__」
「どいつもこいつも俺をコケにしやがって……!」
銃口がエースへと向けられガチャリと撃鉄が上がる音が耳に響く。
引き金に指がかけられる。銃声が鳴り響く前に聞こえたのは、重たい金属が空気を切り裂く鈍い音だった。
「やめねぇか海坊主!エースを放しなァァ!!」
ダダンが振るう大斧を防ぐためブルージャムは左手に持つサーベルを抜き刀身で受ける。
しかしその勢いまでは殺せず、振りぬかれた大斧に押されブルージャムは大きく後退した。
「てめェ、コルボ山のボス猿だな」
「山賊ダダンだ!何の因果かこのガキどもの仮親登録されててね」
「やっといた!」
「オイ、ひディー傷だなルフィ!」
「マグラ、ドグラ……」
「なんでお前らここに」