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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第94章 抗うもの






 荒れ狂う炎が全て呑み込んでいく。
 逃げ惑う人々の悲鳴を耳にブルージャムは燃え盛るゴミ山で歓喜の雄たけびを上げた。

 「ゴミは全て燃やしちまえ!この仕事が完了すりゃオレの長年の夢が叶う!」

 目前に迫る夢の世界に高揚する気分を隠す必要はもうない。
 
 「もうぼちぼちオレたちもあぶねェな。大門へ避難するぞ」

 今は固く閉ざされている大門だが合図をすれば軍の人間が手引きしてくれるはずだ。
 部下を引き連れブルージャムは端町へと続く大門へ向かった。
 そこには一足先に狩りを切り上げてきた部下たちが集まっていた。だが様子がおかしい。

 「おめェらなにしてる」
 「ブルージャム船長!それが、合図をしても門が開かなくて……!」
 「なに……?!」

 部下を押しのけブルージャムは大門へと近寄る。
 そして打ち合わせ通りに決められた回数とリズムで大門の端を叩いた。
 しかしどれだけ待っても反応はなく、門は固く閉じたままだ。

 「おいてめェら、どういうことだ!門を開けろ軍隊!ここからオレたちは避難できる手はずだろ?!約束はどうした!」

 怒鳴り散らし門を叩くが金属を殴る音が空しく響くだけ。
 耳障りな金属が擦れる音が次第に別の何かとなって心の隅にじわじわと影を落としていく。
 それを否定するためにブルージャムは何度も何度も門を殴り続けた。

 「国王!約束したろう!この仕事を終えたら……オレたちを貴族に!」

 力任せに殴り続ける。大門に近づく者がいないようそこには軍隊が待機しているはずだ。ブルージャムの声は確かに聞こえているはず。
 だが声は愚か、衣擦れの音ひとつ聞こえてこないことにブルージャムの中で恐怖は膨れ上がっていった。

 違う。そんなはずがない。
 自分は狩る側で、ゴミを見下す側のはずだ。
 なのに何故自分はこちら側にいるのだ。

 ブルージャムの中に生まれたのは焼け死ぬかもしれない恐怖ではなかった。
 約束された、生まれ変われるはずだった未来。
 それが跡形もなく消えていこうとしている事実に、ブルージャムは恐怖していた。

 「ちくしょう!!てめェらはめやがったのかぁぁ!!」

 炎は全てを等しく呑み込んでいく。
 哀れな男の慟哭もまた、燃え盛る炎へと呑まれていった。

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