• テキストサイズ

【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第94章 抗うもの





 「父親として、いったいあんたが俺にどんな幸せをくれたって言うんだ?」
 「馬鹿なことを言う。立派な屋敷に住めるのは誰のおかげだと思っている。綺麗な服も、ご馳走も、高水準の教育も!これだけのものを与えられて、何が不満だと言うんだ」
 「そんなもの、幸せの証になんかなりゃしない」


 俺はただ。

 初めて描いた絵を「上手だ」と褒めてくれて。
 なんでもない話を聞いてくれて。
 怪我をしたらまず一番に寄り添ってくれる。

 そんな、ささやかな日常が欲しかっただけだ。


 「俺の幸せはここじゃない、高い壁の向こうにある」

 サボは足元に置いていた大きな布の塊を手に取る。
 一発本番で多少心もとないが、この風と自身の悪運に賭けるしかない。
 
 「おい、何をするつもりだ!」

 サボがやることを悟ったのか、アウトルック3世は蒼褪め声を荒げる。

 「馬鹿なことは止めなさい!死ぬつもりか!」
 「そうだよ。死ぬんだ」

 布の塊を背中に背負い、サボは静かにそう答える。

 「貴族のサボは、今日で死ぬ。
 __俺は。これから、本当に自由になるんだ」

 父親へ背を向けサボは一直線に走り出す。
 壁に一番近い場所に位置する建物の中で最も高い屋上からサボは身を投げた。
 背後から風がサボの身体を押す。勢いが消える前にサボは手元のロープを解いた。
 布が広がり風を捉えて大きく膨らむ。急激に上に持ち上げられる衝撃にロープを離さないよう必死に縋りついた。

 「サボ__ッ!!」

 背後にアウトルック3世の言葉を残してサボの身体は壁を越え中心街へと落ちていく。
 方向の修正など出来るわけもない。落下時の衝撃が少しでも和らぐようサボは布を懸命に広げた。
 
 「___っ!!」

 一際強く吹いた横殴りの風を捉えきれず布はくしゃりと歪み、サボはあっけなくバランスを崩す。
 そしてそのまま中心街の裏路地へと落ちていった。
 
 

/ 1122ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp