第94章 抗うもの
「__よし」
何かを決意したようにサボは物陰から立ち上がる。
ここからは更に素早く行動しなければならない。何か一つでもバレたら特定され捕まるのは時間の問題だ。
なるべく見つかりにくい場所を狙いサボは材料を調達する。まず最初に店先でテラスの屋根として役目を果たしていた大きな布。
次に飲食店の裏で荷物を固定していた長いロープ。
その二つを持ってサボは最適な場所へと足早に向かう。
「そこまでだ、このドラ息子め!」
ある場所でごそごそと作業をしていたサボは背後から聞こえてきた声に慌てて立ち上がり振り返った。
そこには実の父親であり、今となってはサボが拒絶する貴族社会の象徴であるアウトルック3世が肩で息をして立っていた。
「お前は、どこまでも親の顔を踏みにじりおって……!
来い!屋敷に帰るぞ!」
「嫌だ。俺は戻らない」
「なに……?!」
サボの言葉にアウトルック3世は表情を歪める。
「いい加減にしろ!何度言ったら分かる。お前のお友達は私の手の中だ!そうやって反抗すれば痛い目を見るのは奴らの方__」
「見逃す気なんかないくせに!」
黙っていられずサボは父の言葉に割り込みそう怒鳴る。
ずっと前から決まっていると言っていた。
ブルージャムが関わっていることも、知っていたはずだ。
なら、ブルージャムに連れて行かれた二人が計画に巻き込まれることだって分かっていたはず。
「二人を盾に俺を無理やり連れ戻しておいて!全部、燃やしてなかったことにする気なんだろ!」
「お前、どこでそれを……!」
「全部知ってる。今夜グレイターミナルが火の海になることも。王族貴族はみんなそのことを知ってるってことも」
「なら、今向こうへ戻るのは危険だと分かるだろう。お前は愚かな考えに縛られている。よく考えれば、どちらが正しいか分かるはずだ」
さぁ、とアウトルック3世は手をサボへと差し出す。
「父と、下賤の悪ガキどもと。どちらの手を取れば幸せか、よく考えるんだ」
「__あんたは、何もわかっちゃいない」
差し出された手を一瞥し、サボは小さく吐き捨てる。