第94章 抗うもの
「__駄目だ」
ばしん、と頬を打つ。頭の中であの眠たげな声が叱咤する声が聞こえた。
このまま勢いでブルージャムのところに乗り込めば一体どうなる?
作戦実行は恐らく近い。あれだけの箱を長時間放置していればグレイターミナルの人が不審に思わないわけがない。
それならばいつでも実行できるよう、また誰かに気付かれないよう仕掛けた箱の周囲に部下を配置しているはず。
仮に水琴がブルージャムを倒せたとしても、命令を飛ばされ一つでも箱が燃やされてしまえばグレイターミナルは火の海だ。
それでは意味がない。ブルージャムを倒すことが水琴の勝利条件ではないのだ。
考えろ。
今私が出来ることはいったい何なのか。
周囲を見渡す。木陰に巧妙に隠されているがざっと見ただけでもすごい量だ。
もし、ブルージャムが本当にグレイターミナルを火の海にしようとしているなら。
きっと誰も逃がさないよう、グレイターミナルの周囲の森には同じように木箱が設置されているだろう。
背後から足音が聞こえる。人数は三人。聞こえてくる話し声からブルージャムの一味だと容易に知れる。
慌てて水琴は蓋を元通り直し近くの木に飛び上がった。今存在を知られるのはまずい。
「どうした、何かあったか?」
「いや、異常なしだな。船長もこんなとこまで巡回させなくてもいいのによぉ。どうせ頭の緩いゴミ山の奴らなんかに気付かれるわけねぇのに」
「お前、船長の耳に入ったら殺されるぞ」
三人はざっと辺りを見渡すだけですぐにその場を去っていった。間一髪だったと水琴は深く息を吐く。
しかしこれで少人数で巡回をしていることが分かった。ならば話は早い。
思いついた作戦を実行に移すには人手が必要だ。水琴は当てを頼るために再び風となりコルボ山を駆けた。