第94章 抗うもの
唐突に脳裏によみがえったのは様々な戦場だった。モビーディックに喧嘩を吹っかけてきた海賊との海戦。ルフィたちと共に遭遇した海軍との追いかけっこ。
煙と共に花を刺激する独特のあの臭いとこの砂の臭いは確かによく似ていた。
つまり、これは__
「火薬……?!」
その量にぎょっと水琴は目を瞠る。ということは、横の瓶はただの水なわけがない。
垂れている水滴を指で掬い取る。それは水よりもぬめりを帯び水琴の指に絡みついた。
「なんでこんなところに、火薬と油が……?」
念のため他の箱も見てみるが中身は全て同じだった。
これだけの大量の火薬と油を設置して、一体ブルージャムは何をしようとしているのか。
グレイターミナルの中にも置いているのを思い出し、水琴はまさか、と一人呟く。
「グレイターミナルの人たちを、焼き討ちしようとしてるの……?」
これが端町の外壁を囲うようにであれば国に対する反乱とも考えられたが、この配置からは考えづらい。
そんなことしてブルージャムにどんな利点があるのかはよく分からないが、考えられることとしてはそれくらいだ。
「大変、早く……っ」
もしもそうだとすれば実行に移す前に止めなければ。勢い良く立ち上がった水琴は思わず放り出していた蓋を蹴飛ばしてしまった。
静かな森に大きな音が響き、それに驚いたのか鳥がバサバサと一斉に飛び立っていく。
頭上から落ちてくる鳥の羽を見上げれば、そこに青い炎を纏う不死鳥が重なった。