第94章 抗うもの
僅か八歳の少年が当然のように持つ価値観に吐き気を覚えながら、サボは先程水琴が現れた窓枠に手を掛ける。
大きく窓を開くと、一瞬の躊躇もなく飛び降りた。
背後から聞こえたステリ―の焦った声を無視し通りを駆ける。向かう先は駐在所だ。
もしステリ―の言うことが事実なのだとしたら、必ず国の軍隊や駐在が絡んでいるはず。
サボの予想は当たり、駐在所の奥まった部屋にはまるで有事の際のように人が集まり話し合いを行っていた。
「明日の作戦は完璧か?決して不備があってはならない」
「我々は完璧だが問題は海賊たちだ。うまくゴミを燃やしてもらわなきゃな」
「今ゴミ山中に油と爆薬を配置してくれてる頃だ」
漏れ聞こえてくるそんなやり取りにこの馬鹿げた話が事実なのだと知る。
すぐに頭を過ぎったのは大切な兄弟たちのことだった。
「くそ……っ!」
もし水琴とステリ―の来る時間が逆だったら。
この情報を水琴に伝えて警戒してもらうことができたのに、とサボは歯噛みする。
だがどんなに悔やもうと時間は巻き戻らないし、水琴はここに戻ってはこない。
気を取り直しサボはどうすれば最善の道を選べるか腕を組み考える。
今すぐ伝えに高町を脱出しようとするのは愚策だ。夜は全ての門が閉まり中心街への行き来すらできない。
それに持っている情報も少ない。夜といっても何時頃か、どれくらいの範囲に爆薬を仕掛けていてどのような手順で作戦を実行するつもりなのか。
少しでも情報を集めて彼らに渡さなければならない。
サボはひっそりと屋敷へ戻り明日に備え早めにベッドへ潜り込んだ。
「エース……ルフィ……」
ブルージャムに連れて行かれた二人を想う。水琴は大丈夫だと言っていたが、この計画にブルージャムが関わっているならば二人もまた加担させられている可能性が高い。
お願いだから無茶すんなよ、と小さく呟いてサボは目を閉じた。