第94章 抗うもの
「グレイターミナルが火事に!?」
「そうだよ、ゴミ山にいたから知るわけないよな」
もう何か月も前から決まってる、とステリ―はサボの手を振りほどくとさも嫌そうに服を払った。
まるで話の内容より服に付いた汚れの方が重要だと言わんばかりの仕草にサボは眩暈を覚える。
「一体なんでそんな……」
「世界政府の視察団が東の海を回ってるのを知ってるか?このゴア王国にはいよいよ三日後にやってくる」
今回はその艦に天竜人が乗ってるからみんな大騒ぎだ、とステリ―はやや誇らしげに胸を張った。
天竜人。世界権力の頂点に立つだろう、世界貴族。
権力者は少しでも彼らの目に留まろうとやっきになりその気を引こうとする。
それは一国の王であっても変わりはない。
「王族たちは少しでも気にいられようとこの国の汚点を全部焼き尽くすことにしたんだ。あのゴミ山さえなければこの国は綺麗だからな」
「お前……いったい何言ってるんだ!あそこにはたくさんの人間が住んでるんだ。住む場所も失うし、みんなそのゴミ山から生活資源を見つけて暮らしてるんだぞ!」
そんなことできるわけない、とサボはステリ―へ詰め寄る。
グレイターミナルに居を構える者は少なくない。端町に避難させるにせよ、仮設住宅を建て移動してもらうにしろ、明日の夜までなんて到底無理に決まっている。
仮に誘導が出来たとして、ゴミ山を失ったあと一体彼らにどうやって生きろと言うつもりなのか。
尚も言い募ろうとしたサボはステリ―の優越感に溢れた視線に気付きはっと口を噤む。
そうだ。頭の悪いサボにだって分かるそんな簡単なことを、大人たちが分からないわけはない。
「お前話を聞いてなかったのか?言っただろ。“この国の汚点”は“全て”燃やすんだ」
「__人もか……?!」
得意げに頷くステリ―にサボは恐怖を覚えた。
明日の夜、多くの人が死ぬと知っていてどうしてそんな反応ができるのか。
その答えはすぐに分かった。
死を理解していないわけではない。
あそこに住む人たちを“人”と認識していないのだ。