第94章 抗うもの
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窓から離れた気配に安堵しながらも若干の寂しさを覚えつつ、サボはノックと共に開かれたドアへ向き直る。
そこにはやたらとニヤニヤ笑うステリ―が立っていた。
「おいお兄様、おめぇバカなんだって?ふふん。お父様とお母様が散々言ってたよ陰で」
許可もしない内からずかずかと室内へ上がり込んでくるステリ―を冷めた目で見つめ、サボは何の用だよとだけ問い掛けた。
「別に。ただこの家でのお前の立ち位置ってやつを分からせてやろうと思ってさ。実の長男だからってふんぞり返ってもらっても困るんだよな」
「安心しろよ。この家の為に尽くそうなんて考えちゃいないから」
時機を待つつもりではあるがその間大人しくいうことを聞くつもりもない。
全てはあの自由な海へ出るため。海賊となり、世界を語る本を書くため。
再び兄弟や水琴たちと堂々と集うために、サボはたった一人で戦い続けることを決意したのだ。
サボの静かな闘志に気付くわけもなく、上辺の意味だけを理解したステリ―はそりゃあ安心だ、と小バカにするように肩を竦めベッドへと腰を下ろした。
「しかしまーあんたも大概悪運が強いんだな。明日の夜は“可燃ごみの日”だ。ゴミ山にいたら死んでただろうな」
「なに……?」
不穏な単語にサボはステリ―の首根っこを掴み無理やり立たせる。すっかり油断していたステリ―はわあ!と情けない声を上げた。
「なにすんだよゴミ人!臭ぇ!近寄るな!」
「今の話なんだよ。どういうことだ全部言ってみろ!」
散々悪態をついたもののサボの剣幕に怖気づいたのか、ステリ―は渋々口を開く。
その口から漏れたのはとんでもない内容だった。