第6章 春の虹
もちろんこちらからアクションなんて起こす気はない。
心で思うだけだよ……でも。
「浮気になっちゃうのかな…やっぱ」
アウトかなぁ…俺は、独り言を言いながら、もう一度スマホを手にする。
バッテリーの劣化にまけて、何回か機種変更はしたけれど、データだけは大事に保存してるんだ。
写真のフォルダを開くと、データ量が今と昔じゃ、違うのは一目瞭然で。
最近は、あまり開くことのなかった昔の日付をピックアップして、画面にうつしだした。
……………
あの幸せだった記憶のままの昌宏さんが、微笑んでる。
色褪せないままそこにいる。
タバコを吸ってる顔。
俺の作ったご飯を食べてる顔。
寝顔。
髭がはえて、少しだらしない感じも、ピシッとスーツを着た姿も、大好きだ。愛してる。今でも愛してる。
けど彼と一緒にうつってる俺は今よりかなり若い。
明るい髪の毛。
肌もつるつるだ。
…………そりゃそうだ。15年以上前だ。
キスした記憶も抱き合った記憶も…この身に与えられた温かさも、包み込まれる優しさも。
悲しいほどに遠い。