第4章 夕虹
「大丈夫だよ。松本の事件は表にはでてない」
「……ほんと?」
「うん……今までどおり、俺もバイト行ってるし。何も迷惑なんてかかってない」
「そう……」
よかった、と松本はふわりと笑う。
その心底安心したような表情をみて、俺は複雑だった。
自分の事は棚にあげて、俺の心配ばかりする松本に胸が痛む。
やはり、こんな……ルール違反をしてるようなバイトは、いつか罰をうけるようになってるのだろうか。
だとしたら、それは俺が甘んじて受けなきゃいけないのに。
松本には、なんの落ち度もないのに。
「でさ、ごめん…その……逃げたのは……体調悪かったからで」
そして、俺はこんな嘘をつく。
「……え?」
松本の表情が曇った。
「…………おまえにバレたら、何をフラフラ出歩いてるんだって……怒られると思って」
こんな俺の苦し紛れの嘘を、松本は素直にとって、
俺の額に指を滑らせた。
「……大丈夫?……熱はないの」
あるわけない。
嘘だもの。
でも、俺は神妙
に頷いた。
「……うん……多分」
「え、ダメじゃん……ちょっと、すぐ寝て」
慌てた松本に腕をひかれて、ベッドに横になる。
心配の方にベクトルを持たせたこの件は、あの場にいた理由までそれ以上きかれることはないと。
狡い俺は、そう計算していた。