第4章 夕虹
雨足が強くなった。
松本の傘に跳ねる雨音が、バタバタうるさい。
「……痛い」
勢いのままに、ぐっとつかまれた腕が、キリ……と痛む。
「あ、ごめん」
松本がパッと手を放した。
一瞬もう一度走り出そうかと思ったけど、この足腰では無理だとあきらめた。
俺が黙ってるから、怒ってると思ったのか、松本がごめん、と繰り返す。
「……ごめん……あの……思わず」
俺は肩で息をしながら、顔をあげられなくて、ずっと足元をみてた。
おまえが好きだと、自分で認識してる以上。
……客に抱かれたあとの、汚い俺は……見て欲しくなかったよ。
雨でずぶ濡れなのが、せめてもの救いだ。
「……お兄さんは」
「あ……兄貴は置いてきた」
「……平気なの?」
俺の家に泊まるといって、松本をぶったことのある兄貴だ。
俺に対してよい印象をもってないのは、うっすら感じてる。
こんなことしたら………松本はまたぶたれるじゃん。
「それは大丈夫」
でも、それに関しては松本はちっとも動揺する様子もなかった。