第4章 夕虹
ところが。
「まって!大野さん……!」
松本の声が追ってきたのがわかって、俺は焦った。
来るなよ、バカ!
今の顔なんて、絶対見せたくなかった俺は、必死で走った。
パシャバシャと水たまりをはねあげながら、全速力で走るが、いかんせん松本の方がスポーツは得意だ。
加えて、俺は裏バイト上がりで、正直、足腰が使い物にならない。
それでも無理矢理動かしていると。
「……うわっ」
ついに、足がもつれて転びそうになった。
「大野さん!」
そこを、間一髪、松本に腕をつかまれて、全身泥まみれになるのは避けることができた。
「はぁ……もう……逃げないでよ……はぁ」
「…………」
松本が息を弾ませながら、俺を逃がすまいと、強く腕をつかんだまま、自分の傘をさしかけてくれた。
俺は、黙ってうつむいたまま、その場に座り込みそうになるのを頑張って耐えた。
ビジネス街のど真ん中ではあったが、時間も時間だし。駅から遠ざかったのもあり、周りに人気はない。